第7回「トイレの天才漫画家」
- 2013/07/29
- 13:19

前回までのあらすじ
90年代初期、広島県呉市の小さな小学校。
全校生徒の前で味わった最大の屈辱。
そんなモノ、とうに忘れ果てたタツヤ達。
翌日の休憩時間、秘密の花園を堪能していたケンだが、
諸事情により急遽トイレへ。
トイレの奥から聞こえる謎の声の主とは??
------------------------------▼以下、本文---------------------------------
最初にことわっておくが、この物語は怪談ではない。
だから、「トイレの花子さん」とかそういうものではないと思う。
どうやら確実に人の気配であると感じたケンは
普通に「大」の個室を覗き込んだ。
「流れるがいい、流れつく所まで流れるがいい!」
そう呟きながら、トイレの壁に漫画を描いていたのは、バボだった。
「おー!バボ。こんなトコでなんしょんな?(何してんだ?)」
「ん?」
「あー。今、大の大冒険いう漫画を書きょーるんよ!」
無論、かの「ドラゴンクエスト~ダイの大冒険~」ではない。
しかし、「大」の個室に「うんち」を主人公にした冒険活劇を書くとは、
さすが天才少年だとケンは関心しながらも忠告した。
「まーた、みんなで掃除させられるで~!」
あれは確か4年生の時だった。
町中に描かれたバボの漫画(落書き)を消すために、
バケツと雑巾を持ってクラス全員で清掃活動を行った事がある。
町中とは大げさなので、せめて学校中だろうか?
記憶は定かでないが、仁方小学校横の川沿いにある白いガードレール。
あそこに青いマジックで書かれた天才画家の作品を
先生に雑巾で拭かされた記憶がかすかにある。※作者の夢かも?
しかし、ケン達にとっては、それで半日授業がつぶれてくれたので
まんざら悪い思い出でもないのだ。
彼も彼なりに右向け右の巨大勢力「学校」と戦っている同志なのだ。
そう思うと彼の行為に決して敵意は覚えなかった。
下手とも上手ともとれないある意味芸術的な漫画と、
それを描くバボの指先を眺めながら、ケンは昨日の事を思い出した。
「あっ、そういえば昨日笑いよーたじゃろ?(笑ってただろ?)」
「ん?」
「先生サヨナラの会よ、ぶち笑いをこらえよーたじゃろ?(笑いをこらえてたでしょ?)」
「あーあー、あれね。」
「何があげに可笑しかったんね?(何があんなに可笑しかったの?)」
そうケンは、昨日の事件の核心に迫った。
【次回へ続く】
【最初から読む】